当社のサービス・ソリューションがお客様の課題解決をお手伝いさせていただいた事例をご紹介します。
右:株式会社WOWOW 技術局運用技術部 チーフエンジニア 河村敦史氏
左:株式会社WOWOW 技術局運用技術部 本多 香氏
中:WOWOWエンタテインメント株式会社 技術事業本部技術推進部 三保蓮華氏
株式会社WOWOWは、生放送への字幕付与に関してフジミックの「リアルタイム字幕制作システム」を導入し、2017年4月より本稼働を開始しています。「リアルタイム字幕制作システム」導入の背景、導入による効果について、株式会社WOWOW 技術局運用技術部の河村敦史氏と本多 香氏、運用に関してはWOWOWエンタテインメント株式会社 三保蓮華氏に詳しくお聞きしました。
WOWOWは、日本初の民間衛星放送局として、1991年4月に開局しました。2000年のデジタル放送開始を経て、2011年10月にはフルハイビジョン・3チャンネルの放送を開始。WOWOWプライム、ライブ、シネマの3つのチャンネルを通じて、世界から選りすぐった映画、スポーツ、ドラマ、音楽等の上質なエンターテインメントをお届けしています。
加入者サービスとしては、オンデマンドサービスも行っており、スマートフォン、タブレット、パソコンなどを通じてのライブラリ、見逃し配信や、放送では見られないようなスポーツのライブ配信なども行っています。加入件数は281万96件(2017年7月現在)です。
2017年1月から「リアルタイム字幕制作システム」を導入してトレーニングを行い、4月より本稼働してリーガ・エスパニョーラ、そしてテニスのグランドスラム生中継(全豪・全仏・全英・全米)に字幕を付与して放送しています。
リアルタイム字幕の制作ではリスピーク方式を採用しています。生放送番組のスタジオ実況・解説を聞いて、社内で取り決めた要約レベルに従ってリスピーク(言い直し)し、音声認識を経たテキストを必要に応じて修正し、字幕として放送します。他局様と比較したことはありませんが、実況・解説の言葉そのままではなく、要約・修正することでより的確に内容を表した字幕となり、表示の遅延は平均7秒ほどになります。
運用体制は1チーム3名、リスピーカー、音声認識された字幕の確認と修正を行う修正者、全体を把握・管理・進行するディレクターで構成されており、テニスなど長時間になる番組については、1時間ないし2時間でチームや担当者を入れ替えて対応しています。
運用チームは11名と少人数で、リスピークや修正については、専門担当者を置かずに、チーム全員の誰もが3つの役割を担えるようにしていることも、大きな特徴だと考えています。
また、リアルタイム字幕専用の部屋(字幕ブース)は3部屋を用意してあり、原則、ブース1をサービス1:プライム(191ch)、ブース2をサービス2:ライブ(192ch)で運用を行い、ブース3は予備として使用します。
いわゆるリアルタイム字幕についての取り組みは今回が初めてです。クローズドキャプション字幕放送については、2015年12月より完パケ素材納品によるサーバー送出での字幕放送を開始し、サービスの開始前には難視聴の方にヒアリングさせていただいたり、字幕付放送のサンプルを視聴していただくなどの調査を実施するとともに、ご要望を伺いました。当初は映画からスタートし、2016年4月から海外ドラマ、2016年10月よりオリジナルドラマ・ドキュメンタリーヘと展開しています。そして2017年4月より生放送への字幕付与を開始しました。
弊社内で2017年4月よりリアルタイム字幕付放送を開始することが決り、約1年前の2016年5月頃より、社外制作委託と社内設備構築の両面で検討を始めました。既にリアルタイム字幕サービスを行っている他局様に伺い、設備と運用を見学させていただいたり、国内外の展示会などで情報収集を行いました。
安定性や操作性などの基本的な要件はもちろんですが、弊社ではサッカーやテニスなどスポーツ番組へのリアルタイム字幕付与を前提としていましたので、下記の要件となりました。
お声掛けさせていただいたのは5~8社で、その中から共同提案も含め半数ほどから実際のご提案をいただきました。フジミック様とは、もともと弊社の営業放送システムのシステムインテグレーターとしておつきあいがありました。また1980年代から字幕ソリューションに取り組んでいて、フジテレビジョン様に導入されていたワープロ方式の実績があること、そしてリスピーク方式の開発が大詰であることをご紹介いただきました。
上記の要件を満たしていることに加え、リスピーク方式については開発終了間際であったため、弊社の要望をシステムに反映していただける余地があることも魅力でした。価格に関しては、システムが弊社にとってオーバースペックでなく、かつ適正な価格でしたね。
実際に導入に向けた開発を開始したのは2016年8月からで、2016年12月には開発を終え、2017年より運用のトレーニングを社内で行いました。リアルタイム字幕に関しては運用ノウハウがなかったために、UIなど運用を想定した設計には苦労しました。開発途中で実機によるデモを行っていただき、操作性、使い勝手などの確認を取らせていただきました。また、リピート放送番組の編集でも字幕を利用できるように、収録・編集設備のネットワークと接続し、字幕データをARIB/NAB形式でエクスポートできるようにしました。
1月後半に全豪オープンテニスがありましたので、その生放送に合わせてトレーニングを実施しました。実際の放送に合わせてリスピーク、修正を行って字幕データを制作、番組終了後に字幕の内容を確認して、次のトレーニングに活かしていきました。実はテニスやサッカーの生中継は時差の関係から日本の深夜に行われることが多いのですが、全豪オープンテニスは時差も少なく、運用スタッフだけでなく、設備関係者や編成など、放送に関係する全員がシステムの状態や制作した字幕の内容確認に立ち会えるというメリットもありました。その他、以前に放送されたスポーツ番組の素材を使ってのトレーニングも行い、選手名、チーム名などの辞書登録も実施しました。また、トラブル発生に対するトレーニングも行い、通常考えられるトラブルの解消方法はもちろんのこと、例えばブース1で発生した障害が一定時間で解消できない場合は、ブース3に移動して放送を続けるような緊急対応のトレーニングも行いました。
生放送に字幕を付与できる環境を整えることで、今後の放送バリエーションが広がりました。リアルタイム字幕に関してはまだ開始したばかりなので加入件数などへの影響は不明ですが、カスタマーセンターにはクローズドキャプションに対する番組追加の要望、問い合せは増えているようです。また、家事をしながら視聴されている方から、「字幕があると音声が聞えにくくても内容が分かって便利だ」という声もいただきました。
本稼働から半年も経っていませんが、新規開発システムとしては弊社の要望を多く取り入れていただいており、運用が効率的であり、非常に操作性がいいと思います。実際に運用してみて気づいた使い勝手などに関しては、より運用しやすく改修を重ねている途中ですが、当初からリスピークなどの専門担当を置かずにチーム内の誰もがすべての役割を担えるよう計画していただけに、まったくの初心者でもとっつきにくさを感じることなくシステムを使うことができています。非常に使いやすく、経験や知識が少ない中、少人数でスタートさせることができたことは評価しています。また、音声認識の精度が高く、キーボード入力よりも修正者の負担も少ないようです。
リスピーク方式は、視聴者にわかりやすい字幕にするために実況・解説の言葉を補足したり、適切な言葉づかいヘの言い換えや省略ができる点が、スポーツの生中継には向いているのではないでしょうか。システム構成も複雑ではないので、比較検討した際の他のシステムより導入のハードルは低いのではないかと思います。
リアルタイム字幕制作運用のトレーニングを実施する際も、現在の仕組みでは送出システムとの連携が必要です。今後はリアルタイム字幕制作システム内の環境だけで、トレーニングができる仕組みを構築していきたいと考えています。また、字幕データをARIB/NAB形式でエクスポートできるよう実装していただいていますが、リピート放送(現在は字幕付与なし)の編集に際しても、この字幕データをうまく活用していく方法について一緒に考えて行きたいですね。
今後とも、リアルタイム字幕制作のスキル向上や放送の安定化に向けてご協力をお願いします。
ホームページ | https://www.wowow.co.jp |
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※取材日時 | 2017年8月 |
※取材制作 | カスタマワイズ |
メール | prosales@fujimic.com |
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TEL | フジミック営業部 03-5520-1550 受付時間:平日10時~12時、13時~17時 |